「アッシュさん見てください、こんなに高くまで。」 夜空へ飛び立つこと数分、火の灯された小さな気球が上空まで昇ってきていた。 古の神が消え、この地に留められていた魂たちが解き放たれてゆく。 彼らが迷わないようこの灯りで導こうというのが 背中に乗せた客人たちの言うことだった。 仲間が飛ばした天灯を、戦士と詩人が上空から見守る。 反応を見るに、その計画は問題なく進行しているようだ。 「・・・よかったですね。これでみんな、自由になれる。」 「・・・・・・」 詩人の小さな呟きに戦士は頷きで返す。 ふと、出会った頃の心痛な面持ちが薄まっているように見えた。 彼もまた長く囚われていたものから解放されたのだろうか。 「一度離れる。しかと捕まるように。」 「はっ、はいっ」 注意を促し、火を消してしまわないよう羽ばたきを緩め、風の流れのまま滑空する。 こんなにも思うまま空を駆けたのはいつ以来か。 地上からは天灯が放たれ続け、それは細い光の線に見えた。 その道しるべを目に焼き付けながらただ祈る。 王や同胞たちの魂が安らぎの地へ辿り着けるようにと。 |